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最高裁判所第二小法廷 昭和24年(れ)1506号 判決

主文

原判決を破毀する。

被告人を懲役六年及び罰金一、〇〇〇円に処する。

被告人が右罰金を完納することができないときは、金五〇円を一日に換算した期間、労役場に留置する。

押収にかゝる拳銃一挺(東京高等檢察廳昭和二三年押第三〇三一号の六)を没収する。

理由

弁護人中野峯夫の上告趣意第二点について。

從犯は他人の犯罪に加功する意思をもって、有形、無形の方法によりこれを幇助し、他人の犯罪を容易ならしむるものであって、自ら、当該犯罪行為、それ自体を実行するものでない点においては、教唆と異るところはないのである。しかして、自ら強窃盗を実行するものについては、その窃取した財物に関して、重ねて賍物罪の成立を認めることのできないことは疑のないところであるけれども、從犯は前に述べたごとく自ら強窃盗の行為を実行するものではないのであるから、本件におけるがごとく、強盗の幇助をした者が正犯の盗取した財物を、その賍物たるの情を知りながら買受けた場合においては、教唆の場合と同じく從犯について賍物故買の罪は成立するものとみとめなければならない。(昭和二四年(れ)第三六四号同年七月三〇日第二小法廷判決参照)從ってこの点に関する所論の見解はこれを採用することができない。たゞ原判決はその判示第三の事実において、被告人が、その故買にかかる賍物を他に運搬した事実を認定し、これに対して刑法第二五六條第二項の規定を適用していることは原判文上明らかであるが、同一人が既に故買した物件を他に運搬するがごときは、犯罪に因て得たものの事後処分たるに過ぎないのであって、刑法はかゝる行為をも同法第二五六條第二項によって処罰する法意でないことはあきらかである。しからば原判決は罪とならない行為を罪として処断した違法があるものと云わなければならない。この点において論旨は理由あり、原判決は刑訴施行法第二條旧刑訴第四四七條により破毀を免れないものである。(その他の判決理由は省略する。)

よって、旧刑訴第四四八條に從い原判決を破毀した上、更に本件につき判決することとし原判決の確定した事実に対し法律を適用するに、判示第一の強盗幇助の点は、刑法第二三六條第一項第六二條第一項に、判示第二の賍物故買の点は、同法第二五六條第二項に、判示第三の公務執行妨害の点は同法第九五條第一項に、判示第四の拳銃不法所持の点は銃砲等所持禁止令第二條第一條第一項に、各該当するところ、強盗幇助の点については刑法第六三條第六八條第三号を適用して法律上の減軽をし、公務執行妨害罪並に拳銃不法所持罪については、その所定刑中いずれも懲役刑を選択し、以上は同法第四五條前段の併合罪であるから、同法第四七條本文第一〇條に則り、懲役刑につき最も重い賍物故買罪の所定刑に併合罪の加重をした刑期及び賍物故買罪につき定める罰金額の各範囲内において(罰金額については昭和二三年法律第二五一号によって変更があったので、刑法第六條に從い軽い行為当時のものによる)被告人を懲役六年及び罰金一、〇〇〇円に処し、被告人がこの罰金を完納することができないときは同法第一八條により金五〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、押收にかゝる拳銃一挺(東京高等檢察廳昭和二三年押第三、〇三一号の六)は判示第四の拳銃不法所持罪の組成物件で、犯人以外の者に属さないから同法第一九條第一項第一号第二項に從って、これを没收する。

以上の理由により主文の如く判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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